朝日新聞のコミュニケーション誌「朝日サリー」  

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vol.55           キッチンこころのオムのっけ
お店DATA
■キッチンこころ 
平4町目22-15         電話/23-0430 
営業時間/11:00〜21:00 定休日/火曜日 
※契約駐車場/鶴屋駐車場・吉田駐車場
●オムのっけ…1,000円
●ビーフシチュウセット…1,500円
●ガーリックライス&焼肉セット………1,250円
●ハンバーグと海老フライセット………1,500円
●ビーフカツレツセット…1,100円

夫婦二人三脚で走り続けて36年
みんなに愛される街の洋食屋さん
■何度も辞めたいと思った開店5年間の辛い日々 
 駅前再開発が着々と進み、平のまちが大きく変貌を遂げようとしている中、36年間変わらない味と人情を守り続けている洋食屋がある。それが〈キッチンこころ〉。
いわき駅から徒歩5分、古いビルや店が建ち並ぶ場所に店を構え、平日のお昼時には、OLやサラリーマンなどで店内が活気づく。
「長い人生には数えきれないドラマがある」というご主人・力丸次男さん。昭和19年郡山市生まれ。幼い頃から料理をすることが大好きだった彼は、高校卒業後すぐに上京。結婚式場やホテル、レストランなどで修業を積んだ。その後、4年間は日立製作所の要害クラブ(外国人の接待所)に勤務し、フルコースばかりを作る日々が続いた。その一方でいつか自分の店を持ちたいという夢はふくらんでいった。27歳になった彼は、奥様・悦子さんの実家であるいわきで昭和47年9月、平5町目に開店した。創業当時の店名は〈レストラン心〉。コック帽をかぶり、本格的なフルコースでもてなした。しかし、いわきでは全く通用せず、しかも「よそ者」である彼は快く受け入れられなかった。それでも、家族の生活のために、出前や仕出し、結婚式などの会場に出向いて料理をするなど、なりふりかまわず仕事をとって、その日その日を暮らした。そして、ハンバーグなど気軽な洋食もメニューに取り入れた。何もかもいわきに馴染んで店を続けていけるように。そうして少しずつ店は軌道に乗り始めた。
↑人掛けのテーブルが6つ。オレンジ色のクロスが優しい雰囲気を漂わせている。歌手の菊池章夫さんも訪れるそう
■店名を変えて再出発時代に乗り動きだす
 オープンして5年目に事件は起きた。賃貸契約などのトラブルで裁判沙汰となり、借金が残ったまま、店を4町目に移転することを余儀なくされた。そして心機一転、店名を変更。〈キッチンこころ〉と名付けたのは、ハイカラなイメージから脱出し、「温かいこころを持って、もてなしたい」という思いからだった。ビーフシチュウ、ハンバーグなどをメインに気軽な洋食メニューに一新、店は大繁盛。ほとんど無休で必死で働き借金も3年ほどで返済することができた。ところが、バブルがはじけ、さらに狂牛病騒ぎで高価な肉はあまり売れなくなった。そんな時安くてお腹いっぱいになる「オムのっけ」に人気が集中した。卵料理の幕開けであった。繁盛時には300個の卵を用意するというほどの看板メニューの「オムのっけ」。ケチャップライスの上に今にもプルンと溢れ出しそうな大きなオムレツがのる。生産者から毎日届く卵は4個使用し、一つひとつていねいにフライパンで作り上げる。ライスの中身はスライスオニオン、マッシュルーム、角切りポーク。仕上げのデミグラスソースは和牛の肉汁、牛のスネ肉、バラ肉、野菜をたっぷり入れ弱火でコトコト2週間かけて煮込んだもの。
↑ボリューム満点の「ガーリックライス&焼肉セット」。極上のロース豚が4枚入り、にんにくとバターがライスによく合う
↑オムレツは火加減が命。クルックルッと手際よく愛情込めて作る。今では技を習いに来るお弟子さんもいるという
■料理を通して生まれる数々のドラマや出会い
 開店以来、たくさんのドラマがあった。国鉄に就職し初めてもらったボーナスを握りしめて来店した青年がとても感動して食べてくれたこと。独身の時、店によくきていたカップルが、結婚して子供ができ、その子供が大人になり恋人を連れてきたこと。重い病気で入院した常連客が、「最後にどうしてもビーフシチュウが食べたい」と懇願され、病院に運んだこと。人と人との出会いを日々大切にしているからこそ生まれる物語ではないだろうか。
 現在彼は63歳、いつもそばには明るい悦子さんがいる。36年来の間、共に助け合い、必死で働き3人の娘さんを育ててきた。ジャガイモや大根、ニンジンの皮むきは悦子さんの仕事。多いときでは1日20kg。「剥きすぎて指紋がなくなっちゃったんですよ」と笑いながら親指を見せてくれた。「料理は死ぬまで続けたい。人生そのものだから」と話す彼は、最近建てた新居にいつでも店が開けるようなスペースを作った。「料理は人を思うこころ、そして夫婦円満が長く続ける秘訣だよ」という言葉に長年続けてきた自信を感じた。
↑気さくで明るいご夫婦。最近建てた新居で、ホームパーティを開き料理を振る舞うのが何よりの楽しみと話す

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