朝日新聞のコミュニケーション誌「朝日サリー」  

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vol.77
うろこいちの
「うにいくら丼」
お店DATA
■うろこいち
住所/小名浜字栄町66-40
電話/0246-54-1233
営業時間/8:00〜17:00
定休日/水曜日(祝日の場合は翌日)
【MENU】
●ちらし丼……………1,250円
●本鮪ネギトロ丼 ……1,250円 
●穴子丼………………1,050円
●お刺身盛り合わせ(2人前)1,500円
●キンキ煮魚………2,400円〜

卸売業から海鮮レストランへ
小名浜の食文化を自信をもって提供
■10代の姉妹が行商 小名浜で卸売業を開業
 プリプリとしたイクラと、濃厚なウニに美しく彩られた丼。ひとくち運べば、潮の香りが口の中いっぱいに広がり、誰もが大きく頷くに違いない。「旨いものだけ出していれば間違いない。ここで商売をさせてもらっていると同時に、小名浜の食文化を提供しているんです」。そんな気概をもって毎日魚と向き合っているのが三代目主人の山野辺勝久さん(55歳)。小名浜魚市場前に店を構え、休日ともなると行列ができる魚料理の店が〈うろこいち〉である。
 初代は彼の祖母にあたるトキさん。戦後まもなく、10代だった姉妹は生活のために沼の内から小名浜に通い、姉のトキさんは小名浜を、妹は平をリヤカーに魚を載せて行商に歩いた。その努力が実り、現在の場所に事務所を構え、やがて市場へ出荷する卸売業に転換を図った。当時の小名浜は昭和39年に新産業都市に指定され、周辺に臨海工業地域が形成されていくにつれて、小名浜港も国際貿易港として港勢を拡大していた。漁業も国の基幹産業として活況を呈した。当時は4〜9月頃まではマグロの巻網漁が行われ、店の前を臨海鉄道が走り、昼夜を問わずたくさんの魚を載せた貨車が築地に向けて輸送を行っていたという。 
↑店の前でスタッフと一緒に。右から2番目がご主人の勝久さん
■将来を見越して 平成元年から小売りへ
 しかし昭和60年代以降、年々水揚げ量と売上高は減り始めた。そこで二代目主人・春三さんは将来を見据え、いち早く小売りを始めた。お客が買った魚をその場でさばいて刺身にし、自宅の玄関の前にテーブルとイスを置きそこで食べてもらった。そのうち屋根と壁をつけ、庭もつぶして拡張した。おいしい噂は着実に広まり、客数も徐々に増えると、次第に手狭になってきた。ちょうど水産業者に貸していた隣の倉庫が空き屋になったため、1階を土産店、2階をレストランとして改装した。今では勝久さんが受け継ぎ、家族と共に店を切り盛りしている。勝久さんは三人兄弟の長男として昭和29年に生まれた。地元の高校を卒業後、明治学院大学法律学部に進学。1年生の時に先代のトキさんが亡くなった。おばあちゃん子だったという彼は、自分が家業を継ぐことを心に決め、卒業後は修行のため、仙台の中央卸売市場で働いた。朝3時からせりに出て、夜は飲食店で魚料理を食べた。「旨い魚は見ただけではわからない。魚のプロになりたいのなら、どんどん町に出て自分の舌で確かめろ」という上司の考えから。その時代に高級魚から地物までたくさんの種類の魚介類を食べ、目利きと味付けを徹底的に学んだ。毎日寝不足で身体は大変だったが、とても良い経験になったという。1年でいわきに戻り、父親と共に働いた。
↑「刺身定食(1,500円)」は店の一番人気。ボリューム満点の上にイキの良さにも驚く
↑キンキ煮魚は脂がのって美味。煮るのに30分ほどかかるので、予約がおすすめ
■新鮮で良いものを選び 喜ばれるものを提供
 勝久さんは毎朝4時半に起き、市場へ仕入れに出掛ける。春三さんがマグロを担当し、勝久さんがその他の魚を担当。6時にはスタッフが揃い、その日の仕込みをする。イカやキンキやヤナギガレイなど店の売りでもある一夜干しは手間暇を惜しまず手作業で行う。
 お客は遠くは九州からも来店する。観光客ばかりではなく、地元の常連客も多い。「地元の方は特に味にうるさいですから、一度まずいものを出したら、もう来てもらえない。料亭のように気取って出すのではなく、確かなものを満足のいく量で出すのがうちのポリシーです」と勝久さん。刺身定食も、今ならカツオ、ホッキ、ヒラメなど旬の魚介を中心にマグロ、タコ、イカなど7〜8品が大皿に盛られ運ばれる。どれも新鮮で良い素材であることは一目瞭然だ。また、穴子丼などは常磐沖で捕れた極太の穴子をさばき、蒸す。白焼きも単品で提供している。全ての丼と定食にはカニの味噌汁がつくのも人気のひとつ。
 小名浜漁協が近年の水揚げ量と売上高の減少で市場業務の維持管理が厳しい状況にあることから、小名浜底曳網漁協に業務を移行するなど、小名浜を取り巻く漁業は厳しい状況にある。そんな中でも〈うろこいち〉が確実に売り上げを伸ばしているのは、家族の強い絆とぶれないポリシーに起因するのだろう。これからも「小名浜の顔」として、末永く頑張って欲しいと願う。
↑1階は土産店となっている。イカの一夜干しや自家製イカの塩辛がおすすめだ

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