朝日新聞のコミュニケーション誌「朝日サリー」  

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vol.84
大徳丸市場の「カニ飯」
お店DATA
■大徳丸市場
住所/四倉町5丁目218
電話/0246-32-2779
営業時間/10:00〜16:00
定休日/火曜日
http://www.daitokumaru.com/

県内唯一のカニかご漁・大徳丸直送
いわきの恵みが凝縮したおふくろの味
■生きた状態のまま水揚げするカニかご漁
 福島県で唯一、カニかご漁を行っている第三大徳丸。かつては底びき網漁業を行っていたが、昭和54年よりカニ漁に転換した。当時は5隻程が操業していたが、今は大徳丸1隻となってしまった。12月のカニ漁解禁と共に、相馬から四倉までの沖合100kmを漁場とし、4月上旬まで操業している。カニかご漁とは文字通り、大きなかごを使ってカニを捕る漁法。直径1m、上部50cmの台形をした網かごの中に魚を輪切りにした餌を入れておく。カニがこの餌につられて入ったら、ふたが閉まり、中に閉じ込められるようになっている。一度に仕掛けるかごの数は400個で、600〜1、000mの海底に4〜5ヵ所に分けて沈める。かごにはドラム缶ほどの大きさのボンデン旗(浮き)がついていて、蛍光塗料が塗布してある。ライトを当てると光り、沈めた場所を確認することができる。
 夕方に四倉港を出発し、約6時間かけて漁場に到着。仕掛けてあるかごを夕方から深夜にかけて引き上げる。深海だけに魚群探知機は使えず、船頭の勘だけが頼りだ。「引き上げてみたら1匹も入らない時もあるの。豊漁の時は本当に嬉しいですね」と話してくれたのが大内絹子さん。三代目船主である大内徳一さんを長年陰で支えてきた奥様だ。徳一さんは残念ながら、昨年、病気で亡くなり、絹子さんがその後を引き継いだ。
↑カニ漁船「第三大徳丸」。船には温度管理された生け簀があり、生きたまま消費者に届く
■30年以上作り続ける人気商品「カニ飯」秘話
 絹子さんが30年以上作り続けてきた、知る人ぞ知る人気のメニューがある。それが「カニ飯」。カニ漁に転換したばかりの頃は、水揚げも安定せず、また、経費もかさんだ。「船だけに頼っていてはだめだ。私も何かしなくては」と、自宅の前に小さなカニの販売所を出した。シーズン中は活ガニはもちろん、足がとれてしまったカニの身をほぐしたり、カニミソを加工して売った。その中でも人気だったのがカニ飯で、野菜とカニ身を炒めたピラフの上に、ゆでたカニの足や爪をのせたもの。当時の店は、セブンイレブン四倉店の向かい側にあり、近所の人や観光客が立ち寄り、店は何とか営業を続けてきた。
 その後、平成10年に〈四倉町ふれあい物産館〉がオープンし、そのテナントに入った。平成13年からはインターネットによる通信販売サイトをスタートさせ、全国から注文が入るようになった。そして、昨年、〈四倉町ふれあい物産館〉の取り壊しを機に四倉漁港内に移転し、直売店を継続することになった。
↑「カニ飯」は1日100個ほど用意。今でも社長の大内絹子さん自らが厨房に立って調理
↑四倉漁港内にある大徳丸市場。網元直送の新鮮な活ズワイガニを販売している
■四倉港に新規オープンアツアツの料理をふるまう
 かくして昨年12月〈大徳丸市場〉はオープンした。四倉漁港内にあり、目の前は海。活ガニの販売はもちろん、カニ漁師飯と銘うって「カニ味噌丼」なども土・日曜日限定で販売している。そして「カニ飯」も引き続き販売中。実はこの値段、30年前から一度も値上げしておらず、500円なのである。「昔からずっと食べているお客さんもいるから、なかなか値段が変えられなくて…」と話す絹子さんに、レシピを伺った。長ねぎとピーマンのみじん切り、ほぐしたカニの身を炒めておく。そこに硬めに炊いたご飯を投入。「魔法のダシ」を加え、塩・コショウで味つけ。別のフライパンで炒めておいたカニの足と爪を飾る。至ってシンプル、だが奥が深い。コツは米をパラッと味つけはあっさり仕上げること。そのために研究を重ね「魔法のダシ」を作り出した。これはもちろん企業秘密とか。塩もいろいろ試した結果、モンゴルの岩塩が一番適していることがわかった。また、素材にもこだわっている。ねぎやピーマンは所有する一反の畑で、絹子さん自らが育てたもの。米はいわき産コシヒカリ。店内でも食すことができ、アツアツのカニがのったカニ飯はあっさりとした味の中にも深みとコクが広がる。
 いわきの海が育てたカニの旨味が凝縮した逸品、春の海をのんびりと眺めながら食してみたい。
↑漁師飯である「カニ味噌丼」は土・日曜日のみ限定の販売で1人前500円

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