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vol.226  永沼佳寛さん
PROFILE
ながぬまよしひろ●昭和55年、いわき市生まれ。15歳で上京し、関東を中心に約10年間修行を積む。昨年10月にいわきに戻り、今年3月1日に〈山小屋 Dinig RAVI〉をオープン。

いつか自分の店を持ちたい              10年間の修行を経て創作料理の店をオープン
■山に囲まれた静かな土地にオープンした     小さな料理店
湯本と泉をつなぐ山道に、ひっそりと佇むログハウス。違和感なく自然にとけ込んだ木製の看板には「山小屋 Dinig RAVI」と手書きの文字。1階の洋室と2階の和室にそれぞれ2組ずつ座れるほどの、こぢんまりとした店内。木の香りにほつと心が落ち着き、窓から差し込むやわらかな光の中で、ゆっくりと創作コース料理を堪能できる店がオープンした。季節のものや自家栽培の野菜、その日仕入れた食材などによってメニューが変わるこだわりも楽しみの一つだ。
 この料理店のオーナーシェフ、永沼佳寛さんは26歳にして、幼い頃からの夢を手に入れた。「料理人になって、いわきで店をオープンしたい」。その店は、オープンから1ヶ月も経たないうちに口コミで評判が広まり、予約でいっぱいの人気店となっていた。
〈山小屋 Dinig RAVI〉
(営)11:30〜14:00(os)、17:00〜21:00(os) (休)不定休 tel:56-7525
●渡辺町泉田字狐塚16-3●ランチコース2,000円〜、ディナーコース3,000円〜 ※要予約
■料理人を志し15歳で上京 修行に励んだ10年間
幼い頃から両親は共働きで、お腹が空くとよく自分で料理をしていた。次第に自分流にアレンジすることで料理の楽しさを知り、たつた一人で何の頼りもなく東京へ。15歳の時だった。両親は「自分の好きなことを思いっきりやりなさい」と背中を押してくれた。
 最初の修行先は東京・江戸川区の日本料理店。当時は包丁の使い方すらままならず、皿洗いをしながらゴミ箱の野菜の切れ端を拾っては千切りの練習を繰り返した。和食から洋食に方向をかえたのは20歳の時。ドイツの日本大使館の専属料理人であったフレンチ専門のシェフとの出会いがきつかけだった。関東を中心にシェフから派遣されたホテルや洋食店でも着実に腕を磨いていった。しかし一から十まで教えてくれる店ばかりではない。見習いに対して何一つ指導しない店では、フライパンに残ったわずかなソースを味見して、作り方を探るしかなかった。時には使い終わったフライパンに塩を投げ入れられたこともあった。
 「悔しい思いもしたし、辛いこともたくさんありました」。見習い時代は、朝から晩まで働き通しで、遊ぶどころか自分の時間すらなかった。給料は自分よりも就業時間の少ない友人の半分以下。しかし、将来自分の店を持つという夢だけは投げ出さなかった。上京してから10年。ついにいわきで店を始めようと決意した。
↑盛りつけも華やかな創作料理
■多くの人に支えられ幼い頃の夢が形になった
 1ヶ月かけていわき中を探し回り、やっと見つけた理想の物件は、山に佇む一軒のログハウス。電気の配線から床下の張り替えなどのリフォームは自ら手がけた。1階のテーブル、レジ台、手洗い場も全て手作り。店の裏には、荒れていた土地を耕し、バジルやミントなどのハーブを栽培するための畑まで作った。いずれはペコロスやエシャロットなど野菜も育てる予定だ。魚や肉は、知人を通して北海道、東京、石川、愛知、沖縄など全国各地からの仕入れのルートを確立。3月にようやくオープンを迎えた。
 永沼さんは今でも以前働いていた店で人手が足りない日かあれば手伝いに行くという。「お世話になつた方には、その倍以上の恩返しをしたいんです」。彼にとって一番大切なもの。それは人との出会いだ。「これまで出会った人たちのおかげで今の自分はあるし、自分の店もオープンすることができた」。彼の実直な人は、料理を通してお客さんにも伝わるのだろう。それがオープンして間もなく人気店となった理由ではないだろうか。
 10年で、日本利要理、フレンチ、イタリアンを熟達した永沼さん。型にとらわれない自由な発想と独自の感性、そしてこだわりの食材から生み出される創作料理には、それら全ての技術が注ぎ込まれている。「料理は時代と共に動くもの。これまで学んだ料理の基礎は大切にしながらも、時代に合った新しいものを取り入れ、そこに自分の色を出していきたい。」
 そんな彼が、今後どのような料理を生み出していくのか楽しみだ。
↑ふんわりとしたやさしい光が差し込む店内。1階は洋室、2階は和室になっている

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