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vol.242 牧野 せつ子さん
PROFILE
7月26日、夕闇の中で行われたJAZZ Jambooでの「トゥレンメ」のライブ。彼らの音楽とともにその会場は心地良い空気に包まれた。音楽の感じ方は人それぞれだが、それはとても身近で、生活に溶け込んでいるものではないだろうか。「家族や両親、いろいろな人達に助けられて音楽活動を続けていられることに感謝したい」。子どもの頃から音楽に魅了され続けている牧野せつ子さんに、音に込める想いを伺った。

■音楽が好きだからひたすら前へと進みたい
夕闇に浮かび上がる舞台から、響き渡る力強い歌声。そこに繊細なギターとバイオリンの音色が重なる。心地良いパーカッションのリズムは、いわばスパイスのようなもの。時に物哀しく、時に軽快に楽曲そのものを演出する。「聴いてくれるみんなの心に響いて欲しい」そんな想いを込めながら、牧野せつ子さんはていねいに音を生み出している。
 兄が買った通販のドラムセット。それが、音楽との出会いだった。ドラムを触らせてもらいながら、その興味はどんどんと膨らんでいった。洋楽にどっぷりとはまった中学時代には、学校をさぼってまで日本武道館にイギリスのロックスター・クイーンのライブを観に行ったこともあった。高校では吹奏楽部に入り、パーカッションを担当。学校外でも、ロックバンドを結成し活動するなど、音楽一色の青春を過ごした。
 進路を決める時期には「私には100%この道しかない」と、両親の大反対を押し切って、たくさんの夢と希望を胸に東京へと向かった。
↑「トゥレンメ」メンバー。中央左から、ヴォーカル・暖みえこさん、ギター・村重光敏さん、ゲストバイオリン・サクハさん。4人が集まると自然にハミングが生まれる
■プロとしての活動結婚を機に原点のいわきへ
東京では、日本のジャズ界の重鎮・猪俣猛氏の音楽教室へ1年間通い基礎を学んだ。その後、知人に誘われて行ったライブに衝撃を受けた。ビックバンドのドラム担当・中村秀樹氏に魅了された彼女は、半ば強引に弟子入りを志願しマンツーマンで指導してもらえるという幸運を手に入れた。またその頃、いわき出身のジャズドラマー木村由紀夫氏の紹介で、新宿にあるジャズバーの老舗〈J〉でアルバイトをすることにもなった。日々音楽に包まれながら働ける環境、時には、今では第一線で活躍するアーティストとセッションをすることもあり、彼女にとって大きな刺激となった。
 やがて彼女の演奏は評判となり、22歳でプロダクションからスカウトされ、女性メンバーだけのバンドでプロデビューを果たした。当時では珍しいガールズバンドは、様々なイベントに呼ばれ、海外の音楽祭にも出演。忙しい時期を過ごした。
 そして、28歳の時に、アルバイト仲間だった、いわき出身のドラマー牧野純郎さんと結婚。それが今のご主人。純郎さんは新婚旅行で行ったモルディブでのスキューバダイビングに魅了され、ダイビングインストラクターを目指すために東京から八丈島へ移転。夫婦で1年半を過ごした。その後、ダイビングショップをオープンさせるためいわきへと戻り、長男を出産。音楽は一時休業し、母としての時間を過ごした。
↑いつも笑顔で明るい表情の牧野さんだが、舞台に上がると真剣な表情に変わる
■新しく動き出した音楽活動は想いを伝えること
 子育てが一段落した頃、「ドラムを教えてくれないか?」と頼まれ、音楽教室で教えることになった。それが再スタートとなり、いわきでも音楽仲間の輪が広がっていった。中でも、現在同じバンド「トゥレンメ」で活動するヴォーカリスト・暖みえこさんとの出会いは大きなものだった。育ってきた環境も音楽のジャンルも違う、いわば畑違いの2人だが、交わることでお互いを高め合い、どんどん新しいアイディアが沸いてくる。そして「音楽であふれる街にしたい」と、2人の想いが重なって生み出されたのが「Sounds Garden」。 初心者からプロ志向の方までていねいに教えるヴォーカル、ドラムスのレッスンや「いい音楽を生で聴いて欲しい」とイベントや結婚式などの企画とライブ演奏を行っている。特に、子どもたちの育成には力を入れている。「毎日耳を塞ぎたくなるようなニュースばかりの世の中だからこそ、夢を持てる環境を少しでも作ってあげたい」。彼女自身、教えることより、学ぶことの方が多いという。
「私はたくさんの出会いと素敵な先輩たちから影響を受けました。そして今度は、私が子どもたちに伝えていきたいんです」と満面の笑みで語ってくれた。
 自分たちの音楽をもっともっと多くの人に聴いて欲しい。楽しい音楽を届けたい。子どもたちに素敵な夢を与えたい…。彼女の夢はまだまだ続いてゆく。

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