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vol.255 
いわきアート集団
PROFILE
平成18年4月19日設立。アートと市民との協動の場を求めて地域社会とアートの共生をめざす団体。会員はプロ・アマ・ジャンルは問わず、高校生から65歳までと幅広く、ジャンルも多岐にわたる。作家だけでなく、趣旨を理解し支援してくれる「アートサポーター」もメンバーの一員として募集している。

誰でも気軽に楽しめるアートの世界を通し、
地域社会の文化向上を目指していきたい
■プロ・アマ・ジャンルを問わない
いわき初のアート集団が誕生
 吉田重信会長を始めとする60名の賛同者によって結成された「いわきアート集団」は4年目を迎えた。会員は高校生から65歳までと幅広く、プロ・アマ問わずに市内で活動する作家らが絵画や彫刻、版画、書、写真、陶芸、クラフトなどジャンルを越えて集う。互いに刺激し合い、次世代や地域を意識した活動を展開して、次世代支援、地域社会の文化向上につなげている。その事務局となる場所が〈ギャラリー界隈〉。オーナー兼、会の事務局長として発足前からまとめ役を担っているのが佐藤繁忠さんである。
 発足のきっかけは5年前に遡る。吉田重信氏、峰丘氏をはじめとする美術家15人が集まり、これからのいわきの美術のあり方について話し合いを重ね、模索してきた。「自分(作家)たちが一生懸命やっているだけでなく、団体を結成することで社会性が高まり、美術を中心とした多くの人達の声を結束させる。そして若い作家を後押しする展覧会や講演会を企画し、相互の関係も充実させる活動をしよう」と意見は一致。平成17年の「いわき街なかコンサートin TAIRA」で実験的に「アート」として参加した経験が発足に弾みを付けた。同集団の役員には積極的に若手を起用している。それは若い人や素人でも「私もアートやってます!」と躊躇せずに声を上げれるような、門戸を開いた集団にするためだ。
↑国内外の有名作家はもとより、地元の若手作家まで幅広いジャンルや世代の人々の個展が開かれており、様々なアートの世界に気軽に触れることができる。隣の喫茶スペースでは食事が味わえる。
■事務局長・佐藤繁忠さんのアート人生にズームイン!
事務局長の佐藤さんは、現在65歳。同集団の陰の立て役者であり、いわきの画廊喫茶の先駆者でもある。幼少の頃から絵や漫画を描くのが好きだった彼は地元の高校を卒業後、大阪に移住。関西水墨画界の奇才ともいわれた矢野鉄山氏に墨彩画を師事。食事もままならない貧しい生活だったが、彼は幸せだった。しかし、そんな生活が3年ほど続いた頃、実家の母の体調が悪くなり、断腸の思いで絵を諦め、実家に戻った。以後35年間、一切、筆を持つことはなかったという。
 戻ってからは会社勤めも経験し、26歳の時に白銀に画廊喫茶〈珈琲門〉を開店。店から200m離れた南町に「草野美術ホール」があり、多くの芸術家たちがそこで個展を開いていた。故・松田松雄氏を含め、絵や文学など幅広い芸術家たちが近くの自分の店にも足を運んでくれるようになり、夜中まで熱い文化談議をして過ごした。1975年には生涯の中で一番の大イベント「現代作家神話展」を主催。松田氏、故・若松光一郎氏、鯉江良二氏など、芸術家10名が情熱的な作品をぶつけあった。今でも胸が熱くなる思い出だという。その後は時代の流れに上手く乗れなかったこともあり、4回店を閉店。しかし、彼には支援してくれる仲間が大勢いた。「再生する場を何度も何度も与えてくれた方々には今でも感謝しています」。そして1988年、結婚を機に、合同庁舎前に3度目の移転をしギャラリー専門店として店は軌道にのった。1999年には今の場所に店を移し、喫茶スペースも復活。今では市・内外の多くの芸術家たちが個展を開き、賑わいを見せている。
↑「いわき陶芸協会」の会長を務めるオーナーの作品も、時にはギャラリーに登場する。写真の可愛らしい壷のタイトルは「四季曼荼羅」
アート集団 事務局長
佐藤 繁忠 さん
■新たな発見・感動を呼ぶ第3回アート集団美術展
 今年で3回目を迎える大イベント「いわきアート集団美術展」は9月22日〜27日、市文化センター3Fで行われる。去年の「アート集団美術展」で様々なジャンルの作品を見て、とても感動し「どんな方たちがこの素晴らしい作品を作ったのだろう。私も仲間になりたい!」と入会したメンバーも多い。多彩なメンバーがそれぞれの個性でひしめき合う展示は多くの人々に刺激を与え、アートの輪がますます広がっていくに違いない。「枠にとらわれず、いろいろなジャンルがあるということを認識しながら、楽しんでほしい」と、佐藤さんはメンバーの思いを代弁する。
 「界隈」という字はその近く、その辺りという意味を持つ。佐藤さんが夢半ばにして諦めた芸術家への道。しかし、筆を置いてからの35年間、彼の周りはいつもアートで溢れていた。どんな形であれ、アートを愛する気持ちを忘れずにいたことが今の彼へとつながったのだろう。還暦を迎える数年前、封印していた筆を再び持った。10月には自身の個展ならぬ”発表会“も開く予定だ。この秋、いわきのアートシーンを知る上で欠かせない存在、佐藤さんの芸術談義に耳を傾けてみてはいかがだろう?

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