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vol.262 
いわき絵本と朗読の会
箱崎耕平さん ・ 典子さん
PROFILE
箱崎耕平さんは昭和20年生まれ、上智大学を経て、いわきで就職。40歳で典子さんと劇的再会をして結婚。現在「いわき絵本と読みきかせの会」の会長。典子さんは東京日本橋生まれで、いわきに移転。東洋大学で図書館司書の資格を取り、高校に勤務。現在ご夫婦と猫4匹、犬1匹と暮らしている。
●いわき絵本と朗読の会/?26-6264(箱崎さん方)

夫婦揃って第二の人生をスタート
三世代で聞く読みきかせと朗読
第6回街中朗読会に向けて
日夜練習に励むメンバー
金曜日の昼下がり。数名の女性が向かいあって座り、朗読をしていた。作品は白州正子の短編。明治の終わりに伯爵家に生まれ、後、官僚・白州次郎氏と結婚。芸術、骨董の世界でその先駆者であり、きりっとした文章を書く作家だ。時には感情を込め、朗読者は時には淡々と読み進め、それを周囲は真剣に聞き、読み終わると意見を言い合う。メンバーは『いわき絵本と朗読の会』。「6月にラトブで行われる街中朗読会に向けて、今日は初めての練習なんです」と会長の箱崎耕平さんが教えてくれた。街中朗読会は平成20年から行われている。きっかけは3年前のラトブのオーブン。市の商工労政課からの依頼で朗読会を行ったところ、100人以上の方が集まり好評だった。「その後も続けて欲しい」という要望もあり、翌年から毎年2回、6月と12月に行っている。
 今まで源氏物語や宇野千代、向田邦子などの作品を朗読してきたが、今年は白州正子という難しい作品に挑戦する。メンバーのほとんどが主婦で家族が出かけた後や寝た後に思う存分声を出して練習に励んでいる。
↑平成20年6月にラトブで行われた第2回街中朗読会より。源氏物語を朗読する会員。紫の上の和歌の書も展示した
夫婦で早期退職をし、
同じ目的に向かって
 同会の発足は平成17年だが、その2年前から会長の奥様である箱崎典子さんが数名の友人と読みきかせの活動をしていた。高校の司書だった典子さんは、生徒たちの読書離れを身をもって経験し、幼い頃からの読書の大切さを痛感していた。平成15年に早期退職をし、第二の人生は自分らしい生き方をしようと、JPIC読書アドバイザーの資格を取り、同時に朗読の勉強を始めた。耕平さんもそんな典子さんの姿に同調、サラリーマン生活に終止符を打ち、同じ道を選んだ。
 夫婦で活動をしていく中で「どうせやるなら、理論も理解しよう」とNPO法人絵本子育てセンターの絵本講師養成講座を修了し、絵本講師の認定を受けた。「そこで学んだ子どもの発達段階における絵本効用の大切さ、読みきかせのノウハウ、理念など、とても勉強になりました」とご夫婦。また、東京・砧のNHK日本語センターの朗読セミナーを6年間ほど受講し、今後も継続していくつもりだ。
 朗読の基本には4つの要素があると耕平さんは言う。「1つが強弱、2つに緩急、3つに高低、4つに間」。そして息に声を乗せることが重要なのだ。現在会員は18名。毎週金曜日の例会では読み聞かせの練習や朗読の勉強会を開いている。
↑ブラックパネルシアターでは貼り手は典子さんが、読み手は耕平さんが行っている。「息が合わないと時々ずれてしまうとか
全て手作りの
ブラックパネルシアター
 同会は〈草野心平文学記念館〉で毎月一度、子ども対象のおはなし会を開いている。次回は4月18日(日)で作品は「うさぎがくれたバレーシューズ」「さくら」「じぃじのさくら山」などの季節にあった絵本を読み聞かせする。子どもたちはこの日を楽しみにしていて、目をキラキラと輝かせながら、すっかり物語の世界に引き込まれる。毎回訪れる親子もいるが、中には大人だけの参加者もいるとか。
 おはなし会にはもう一つの楽しみがある。それが耕平さんが行う「ブラックパネルシアター」。これは部屋を暗くして、蛍光絵の具で作った絵人形を動かしながら、話を進めていくパネルシアターのこと。紫外線の出るブラックライトで照らすと、蛍光塗料が浮かびあがり、とても幻想的。原画は会員である鈴木遥さん、物語と人形の製作は耕平さんのオリジナルだ。蛍光塗料は色数が少ないために、肌色や中間色を混合する難しさがあるとか。「既製品もあるのですが、私としては物足りなくて、全部手作りにしています」。人形はPペーパー(不織布)に下絵を書き、蛍光塗料で彩色をし、カットしていく。
 現在13作品程のレパートリーがあり、物語の舞台は日本はもちろん、ロシアやギリシアなど海外も含め様々。「三つの願いごと」というお話は、ロシアが舞台。父を早くに亡くし、病気の母の面倒を見るために薪を売る少女の物語。ある日、行き倒れになったおじいさんを助ける。すると、天使が現れ3つの願いを叶えてあげよう」と言うが「私は今、何も不満はないので、願いごとも特にありません」と答えた。やがて娘は結婚、母親の病気は治り、子どもにも恵まれた。ある日服をねだる子にその話を告げた。「でも願いは叶ったの。素晴らしい伴侶を得て、お母さんが元気になって、そして宝物の娘ができたから。神様はちゃんと見てくれているのですよ」。素晴らしい話に取材中の私も大きくうなづいてしまった。「お子さん、お孫さんと一緒におはなし会、文学の世界に浸る朗読会へ来てください」とご夫婦。
 絵本と朗読で第二の人生をスタートさせたお二人、これからも人々の心を動かし、楽しませてくれるのだろう。
↑毎週金曜日に市社会福祉センターのボランティアルームに集まっている。真剣に朗読の練習をするメンバー

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