Vol.195


川島工房 川島 力 さん


TIKARA KAWASHIMA

PROFILE
かわしま・ちからさん●1970年いわき市生まれ。高校卒業後大学でデザインを学び、市内の建築・不動産の会社に勤める。住宅販売関連の仕事をした後、2年半前に川島工房を設立。プロレスマスクは2年前から製作。現在は、住宅模型・造成模型・インテリア模型製作、プロレス関連デザインなどを手がけている。

問/川島工房:小名浜金成字砂田9-1 TSKビル 302
tel 24-7690 FAX 24-7689
http://www.kawasimakoubou.com






川島さんが製作したマスク。皮、ラメ、合皮などの素材で製作している。IWAKIの文字が入ったものもある



模型作品にミニチュアカーを置くのは川島さんのこだわりのひと





室内には家具も配置された分解模型

指先から生まれる夢。
住宅の模型づくりと
プロレスマスクへの想い

プロレスのマスクを製作している人がいわきにいる…そんな話を聞いて訪ねた〈川島工房〉。そこは、住宅模型製作の工房でもあった。精巧につくられた様々な住宅模型が並ぶ。そして話を聞いていくうちに目に入ってきたのが、プロレスのマスク。青い布をめくった棚の上には、たくさんのマスクが置かれていた。住宅模型とマスク。そこには、川島さんならではの共通点があった。

お客さんの夢を形にと
始めた住宅模型の製作

 しっとりとした和風建築の住宅、絵本の中に出てきそうな可愛らしい洋風の家。玄関の周りには花が咲いていたり、カーポートにはミニチュアの車が停まっている。今にも家の中から住む人の声が聞こえてきそうなのが、川島さんがつくる住宅模型だ。
 大学を出て、建築・不動産業の会社に就職した川島さんは、住宅販売に関わる仕事をしていた。お客さんにとって大きな買い物となる住宅を販売するのは簡単なことではない。どうすれば、お客さんが安心して、そして喜んでくれるだろう…そう考えた時、思いついたのが住宅の模型づくりだった。
 大学で学んでいたデザインの経験が役に立った。図面から形を起こし、50分の1に縮小した家をコツコツとつくっていく。図面を見ていただけではピンとこなかったお客さんも、実際にこういう家が建つんだというのが一目でわかることで安心し、喜んでくれたという。
「私が初めてつくった模型を、お客さんがとても気に入ってくれました。家が建った今でもその模型を玄関に飾ってくれています。嬉しいですね」
と川島さん。この模型づくりがやがて仕事となり、2年半前に住宅模型のアトリエ、川島工房を設立した。

ふとしたきっかけで
プロレスマスクづくりへ

 川島さんがプロレスマスクをつくるようになったのは、ふとしたことがきっかけだった。住宅模型に使う小物を買いに行った店に、マスクが飾られていた。お兄さんが新日本プロレスの練習生をしていたこともあり、以前からプロレスが好きだった川島さんは、マスクにも興味を持った。ショップの人の「川島さんならつくれるんじゃない?」という言葉に「つくってみよう」という気持ちになったという。
 住宅模型づくりは精密さが問われる。1ミリの誤差もないように細部まで気を使う。そんな模型づくりの“腕”が、マスクをつくる時にも生かされた。緻密でしっかりしたつくりに加えて、大胆なデザインのセンス。「川島さんがつくるマスク」は、少しずつ業界の中で評判になり、プロレス雑誌などでも紹介されるようになった。
「マスクは芸術だと思います。選手が登場した時の、客席がわーっと盛り上がるパフォーマンスにも魅かれますね」という川島さん。素材やデザインには、彼ならではのこだわりがある。プロレスラーからのオーダーも多いという。
 今年春には、ボブ・サップが登場して話題を集めたユニークな某会社の入社式で、社長の関口氏がリングの上でボブ・サップと闘うシーンで着用したマスクを、川島さんが製作した。また、いわきで開催されたイベントの時には、『IWAKI』のロゴとシンボルマークが入ったオリジナルのマスクもつくった。関係者と協力して、これから独自のキャラクターもつくりあげていきたい、と話す。

イメージが形になり
そして夢につながる

 川島さんにとって住宅模型とマスクづくりは、両方あっていいバランスがとれているという。今は99対1の割合で住宅模型の方にかかる時間が多いとのことだが、この「1」の存在が貴重なようだ。
「住宅模型も、プロレスのマスクも、形がないところからつくりあげていくもの。想像していたものが形になっていく面白さがあります。そして、そこからさらに夢が広がっていくようなものをつくっていきたいですね」
 まずはお客さんが喜んでくれるものを、そしてそこから夢につながるものを…住宅模型とマスクづくりにかける想いには、そんな共通点がある。
 川島さんは住宅模型をつくるとき、お客さんの車がワゴン車だったら、模型のガレージにもミニチュアのワゴン車を入れて、少し未来の夢を形にする。自分がつくったマスクを着ける選手には、がんばってほしいとエールを送る。川島さんの手から生まれた小さな夢の種が、やがて大きく花開くようにとの願いを込めて。(大谷)


■バックナンバー
2004年6月号 いわきマジシャンズクラブ/鈴木清友さん
2004年7月号 明道賛家 コーヒー道師範/神場 明久さん

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