Vol.213
ゴスペル講師・ソウルシンガー
菅波ひろみ さん 
HIROMI SUGANAMI
すがなみ ひろみ●
福島県いわき市小名浜生まれ。みずがめ座。
深川・辰巳芸者の血を受け継ぐ。10代後半から黒人音楽に魅せられ、Bluesを歌い始める。地元いわき市及び県内外で、ヴォイストレーナーとして活躍、併せてゴスペル歌唱指導インストラクターとして、多くのグループ、イベントプロデュースを手掛ける。2004年に活動の拠点を東京に移し、ベテランミュージシャンとセッションを重ね、高円寺ジロキチ、荻窪ROOSTER、目黒Blues Alley Japanなど多くの名店に出演。併せて、2003年には、ニューオリンズの地元フェスティバルに参加、2004年にはChicago Gospel Choirと共演、2011年にはミネアポリスにてThe Sounds Of Blacknessとのワークショップで交流を計るなど、渡米を重ね音楽のルーツにあるブラックミュージックを探求。2008年より関西中部地方に進出、ライヴ活動を展開。2011年3月11日、いわき岩間海岸で、東日本大震災に遭う。大阪のFM802内”Hiro T's Jam" 内にて自身の曲『Put Your Hands Up』が、看板DJヒロ寺平氏によって大プッシュパワープレイ。同年5月、異例の、無名アーティスト曲が同FM月間総合ランキングにて21位にまで上昇。2011年4月、2012年4月と、FM802主催『New Breeze』@大阪野外音楽堂に立つ。311以降は、関西発のSounds for prayによる”Colors-絆―)に参加の他、フクシマレコーズへの録音に取り組む。温かく力強い歌声と佇まいとその歌詞は、年代を越え、多くの日本人の心に沁み込んでゆく。
■ http://www.hiromisuganami.com/

主婦業、ボーカル講師、シンガー
3つの顔を持ち
いわきと都内で活動中

身長155cm。小柄な彼女が奏でる歌は、まるで黒人女性を彷彿とさせるほどソウルフル。現在、市内外で音楽講師を勤める傍ら、都内のライブハウスで活動を行っている。いわきと東京との二重生活をパワフルにこなす菅波さんを訪ねた。

同時期に始まった
結婚生活とプロ活動

 
彼女と歌との出会いは叔父の書斎で発見したアレサフランクリンのライブ盤。何気なく針を落とすと、初めて聞く荘厳な魂の叫びに鳥肌が立つほど心が震えた。以来ソウルやブルースに傾倒するようになる。高校卒業後、市内のアパレル企業に就職するが、1年ほどで退社。当時ブルースロック系のバンドでボーカルを担当しており、その頃からプロのシンガーを志すようになった。花屋、編集者、看板デザイン、バーのウェイトレスと職を転々としながら、バンド活動を続けた。
 24歳の時、音楽出版会社にデモテープを送ったが、音沙汰なし。忘れかけた頃、フリーランスのプロデューサーから連絡があった。ちょうど結婚を決めた時で、迷う彼女の背中を押してくれたのは夫だった。結婚と共に、東京でのシンガーとしての生活も始まった。日本にもソウルブームが訪れ、たくさんのソウルシンガーが生まれては消えた。彼女もオリジナル曲の製作を行いながら、六本木や青山等のDJクラブでライブ活動を続けた。しかし、自分の意見も言えず、納得のいかない曲を歌う毎日。いよいよCDのレコーディングという時に「これ以上、歌えない」とプロデューサーに告げた。父の死や義父の病気なども重なり、くたくたに疲れ切っていたこともあった。結局、プロ活動は1年間で終止符を打った。
ゴスペル講師を勤める傍ら音楽活動も再開

 いわきに戻り、生活のためにパートとして働き始めた。仕事の内容は子供音楽教室の生徒の勧誘だったが、当時ブームとなってきた「ゴスペル教室」の立ち上げに関わることになった。しかし、歌は歌えても、教える技能はまた別の話。もちろんピアノも理論も必要だ。そこで1年間勉強の末、財団ヤマハ音楽振興会の認定試験を受験。いわき市内では初のポピュラーミュージックスクール・ヴォーカル科の講師資格を得た。そして1年後、ゴスペル教室の生徒と共に「Colla-Voice」を結成。市内各地の様々なイベントに参加し、合同発表会では観客300人を動員するなど、人気のグループとして成長していった。
 その講師業と並行し、音楽活動も再開した。28〜29歳の1年間は月1度のペースでライブを開催。回を重ねるごとに観客も増え、満席となる程、彼女の実力は着実に認知されていった。

東京で初のソロライブ
新たな一歩を踏み出して 

 2003年。彼女はニューオリンズで開催された「リジョイシン・ゴスペルフェスティバル」の会場で歌っていた。本物に触れて帰国。「市内では本格的な音楽活動は無理、やっぱり東京で自分を試したい」という気持ちがどんどん強くなり、2004年秋、単身上京を決意。夫は、快く送り出してくれた。いわきでの主婦業・講師業、そして週の半分は東京でシンガーとしての活動が始まった。全くつてがない中で、とりあえずジャズ系ライブハウスのオーディション等を受けるが、評価は今ひとつ。そんな時、友人に紹介され、有名なミュージシャンが活動拠点としている荻窪のライブハウス〈Live&Cafe 音楽食堂 Rooster〉を紹介され、ゲスト参加。ところが最初からミスをしてしまい「もうここでは歌えない」とかなり落ち込んだが、そんなことでは前に進めないと数日後、一人で〈Rooster〉に足を運び、再度セッション。そんな意気込みを買われ、高円寺〈jirokichi〉、品川〈トラベッカ〉など、彼女の活動の場は次第に増えて行った。
 そして、今年2月15日、〈Rooster〉で初めてのソロライブを開催。アレサ・フランクリンの曲を中心に歌った。立ち見が出る程の満席の客、最後にはスタンディングオベーションが…。「Soulの女王、誕生の夜」とマスターが名付けたこの夜は、彼女にとって忘れられない日となった。
「夢はソウル界の綾戸智絵」と笑う彼女。「福島訛りの単身赴任シンガー」として、これからも頑張って欲しい。(曽我)

小名浜大原のキクヤ楽器店で行っているゴスペル教室。職業・年齢・性別も様々な「Colla-Voice」のメンバーと共に

〈Rooster〉でのライブ後、自己のバンド「HIROMI WIZ Da Groove Makers」と。「家族ぐるみでおつきあいいただき、本当に暖かく、感謝しています」と菅波さん


2月15日のライブより。ソウルナンバーを力強く歌い観客を魅了した

■ライブの予定
4月2日(日)、6日(木)、11日(木) 荻窪Rooster出演
http://www.ogikubo-rooster.com



■バックナンバー
2004年6月号 いわきマジシャンズクラブ/鈴木清友さん
2004年7月号 明道賛家 コーヒー道師範/神場 明久さん
2004年10月号 川島工房/川島 力 さん
2004年11月号 いわき食介護研究会
2004年12月号 気鋭の料理人たち
2005年1月号 百席の会/古川隆 さん
2005年2月号 エディター/渡部サトさん
2005年3月号 朝日サリー発行人 /曽我泉美(前編)
2005年4月号 朝日サリー発行人 /曽我泉美(後編)
2005年5月号 ほろすけの会/「三人家族」
2005年6月号 JKC公認A級ハンドラー/長岡 裕子
2005年7月号 ジャズシンガー/本田 みどり
2005年8月号 四季のハーブを楽しむ会/カモミール
2005年9月号 オペラ歌手/鈴木幸江さん
2005年10月号 いわき街なかコンサートに携わる人々
2005年11月号 歌手・クラブ経営/箱崎幸子さん
2005年12月号 (有)エルイーオー「L倶楽部」代表/石川 淳子
2006年1月号 幼稚園園長・絵本美術館創設者/巻レイ
2006年2月号 あみぐるみ作家/高橋ひろみ
2006年3月号 茶藝師・カフェ経営/加原世子

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