Vol.212
カフェ経営・茶藝師
加原 世子 さん 
SEIKO KAHARA
かはら せいこ ● 昭和22年、いわき市平生まれ。
10歳で父が他界、母子家庭に育つ。磐城女子高校卒業後、市内の企業に入社。24歳で職場結婚し、寿退社。子供二人に恵まれ、ご主人の転勤でオランダに移転。6年間の生活の中で様々な刺激を受ける。昭和62年、39歳でいわき明星大学英米文学科に合格。主婦業と自宅での学習塾講師、そして学生として忙しい生活を送る。平成3年に卒業後、市内の企業に就職。福島高専に通う留学生に週1度、日本語や日本文化の指導をした。平成8年〈ガーデンカフェ花遊庭〉開業。平成11年、〈オープンガーデンいわき〉を設立。平成14年、日本中国茶インストラクター協会認定インストラクターの資格を取得。そして平成15年には中国政府公認の国家資格「茶藝師」の中級試験に合格。現在複数の教室を持ち、忙しい毎日を送る。

湯本に店舗を構えて10年
中国茶の愉しみを
茶藝師として伝えたい

ガーデニングを愛した
母が人生の伏線となって

 「人生には伏線があるものよ」と話す加原さんの生き方は、全てが原点からつながっている。その原点が母親だ。10歳の時に父が他界し、母子家庭に育った彼女は、母が忙しい合間を縫って庭づくりをする姿を見ながら育った。作業の合間の一服はいつも決まって日本茶だった。おいしそうに飲む横顔を今でも忘れない。彼女自身もガーデニングが好きで小学3年生の時に初めて庭に池を作った。7月、池に浮かぶ蓮のつぼみがふくらんだ。「花が開く音をどうしても聞きたい」と学校を休み、池の傍らでその瞬間を待った。あれから30年の時間が流れ、同じ場所に〈ガーデンカフェ花遊庭〉をオープンさせた。四季の花々が咲く庭を眺めながら紅茶を愉しむ店。店内でたくさんの種類の紅茶や中国茶、茶器などの販売も行っている。食事は500円から、ケーキやスコーンもある。「母が知ったらさぞびっくりしたでしょうね。」オープンの数年前にガンでこの世を去った母親が大切にしていた庭には、たくさんの人が訪れ、癒されている。

オープンガーデンを
いわきにも普及させたい
 
平成11年に〈オープンガーデンいわき〉を15名の仲間と共に立ち上げた。個人宅の庭を仲間同士で公開し、交流を図るのが目的。加原さんが春と秋に庭巡りのツアーを行い、庭主と一緒にイベントを展開。会員誌を作成し、誌上オープンガーデンも実施した。
 現在、会員は100名に増えたが、加原さん自身が時間が取れなくなってきたため、昨年は休会した。そして4月から〈NHK文化センターいわき教室〉のガーデニングの講座を担当することになった。「見るガーデニング」、つまりオープンガーデンを訪ねて個人の庭を巡り、花や樹に触れ、庭主の思いを聞く。3カ月に一度はバスで遠出し、価値のある庭園を巡るという講座。
「本業から離れて、趣味人としてみんなと一緒に楽しみながらやっていける機会を与えていただいたことは、私にとって、ときめきがあります」
 いつかいわきが「オープンガーデンの街」になることを願っている。

紅茶から中国茶へ
茶藝師の資格を取得 

 当初は紅茶についてもっと深く知りたいと「ブルックボンドハウス認定ティーコーディネーター」の資格取得のためにスクールに通っていた。その勉強の中で中国茶に出会う。お茶のルーツは紅茶も日本茶も同じで、中国茶に辿り着く。その背景にある歴史や精神文化を知る程、中国茶に魅了され、中国茶専門家としての資格「日本中国茶インストラクター協会認定インストラクター」を平成14年に取得した。
 さらに中国政府公認の国家資格「茶藝師」を目指した。茶技の域を超えた茶藝は本場中国でお茶に関わる職業では絶対必要とされるもので、その歴史や文化を理解した上で、その知識や技術を他人(他国)に正しく伝える技能が問われるもの。東京で6日間の集中講座を受講し、最終日に筆記と実技の試験が行われ中級試験に見事合格。東北では唯一の合格者だった。中国茶は茶道と違って華美な茶器を揃えたり、様々な決まり事に縛られたりしない。茶葉にあった器を選び、湯の温度管理をし、一番おいしい煎れ方を探求することが目的だ。滝のように茶壺に湯を注ぎ、その音を愉しみ、聞香杯(もんこうはい)に茶を注ぎ、香りを聞く。まさに自然を感じる瞬間。静かにヒーリングサウンドが流れる店内でお茶の香りに包まれると、すぅーっと肩の力が抜けていく。
 「無茶不楽(お茶無くして楽しみなし)、私の人生にとってお茶は欠かせないものなの」と話した言葉がとても印象的だった。(曽我)

2000年に北京で、凍頂青心烏龍茶づくりを学んだ。茶葉を発酵させるのはとても力のいる作業。都内で行われた「世界のお茶まつり」の会場で茶藝を披露した



「デトックス和ランチ(1,050円)」は五穀米、実だくさんのスープ、他3品がつく人気メニュー。この日のメインはシメサバだった


「ガーデンカフェ花遊庭」
常磐下湯長谷町梅ノ房18-1
tel.44-1427
open11:00〜17:30 (オーダーストップ17:00)
close(原則として)毎週月・火曜日、祝日の場合は営業
http://www.kayutei.com/



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